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Liveをよくお使いの方はおそらくすでにご存知かと思いますが、Liveではオーディオファイルを編集して柔軟なサウンド加工ができます。この編集機能は、非破壊編集と呼ばれる方式です。これはトランスポーズや、サンプルオフセット、ボリュームエンヴェロープなど、オーディオクリップでのあらゆる要素を、元となるオーディオファイルが修復不能な状態になる危険性を伴うことなく編集することが可能です。(つまり、万が一元のデータのバックアップ保存がうまく行われていなくても、非破壊編集は元のデータに影響を与えませんので安心です。)また、非破壊編集は、ハードディスクの活用においても有効な手段です。この編集方法によって、1つのオーディオファイルに対して、異なる設定をした複数のクリップを派生させることができます。つまり、liveではハードディスクの容量を圧迫すること無く、1つのオーディオファイルから多くのバリエーションのサウンドを作ることができます。
しかしながら、非破壊編集がいつも最適な編集方法ではない場合も存在します。例えば録音したギターサンプルで実際の演奏が開始されるまでの間、アンプノイズの入ってしまったデータがあるとします。もちろん、ボリュームクリップエンヴェロープ機能を使えば、このノイズを簡単に消すことができます。しかし、このサンプルをほかのLiveセットでも使用する場合には、毎回同じノイズ除去の作業をしなくてはなりません。つまり、このノイズの部分をオーディオファイル自身から取り去ってしまえば、同じ面倒に悩まされることはなくなります。
Liveでの編集は全て非破壊編集になります。従って、これからご紹介する例はすべて、その編集結果をオリジナルに上書きするのではなく、新しいオーディオファイルとして作成することになります。この結果、オリジナルのオーディオファイルをご使用したいときには、いつでもアクセスできるという利便性があります。
トラックバウンス、リサンプリング、レンダリングについて
ここでクリップ中の不要なノイズをボリュームのクリップエンヴェロープで消したとします。
このクリップはこれで都合のいい音になりました。この変更をディスクに保存する為には、このクリップを新しいクリップとして再度録音する必要があります。その結果、新しいサンプルファイルのクリップが作成されます。Liveのセッションビューでは次の3つの方法で、これを行うことができます。
トラックにバウンスする
最もわかりやすい方法として、あるトラックのクリップの再生音を別のトラックに入力して録音する手法があります。通常、この方法のことを「トラックバウンシング」と呼びます。次の図例では、トラック2でトラック1の出力音をモニターできるようにその入力を設定しています。

トラックバウンスのためのルーティング設定例:トラック「2 Audio」の入力設定;Audio Fromの下のリストから「1Audio」選択して設定します。
このルーティング設定が完了したらクリップを再生して、トラック1の出力レベルがクリッピングしていないこと(メーターの赤い領域が点灯しない程度)をご確認ください。次にコントロールバーの停止ボタン(またはスペースキー)を押してください。この状態ではLiveは停止していますが、次にLiveが再生をした際に今まで再生していたクリップが引き続き再生するようになっています。(クリップの再生ボタンが点灯したまま)ここで、トラック2の録音アームボタンを押して(レコーディング待機状態)にし、このトラックの空クリップスロットの丸(クリップレコーディング)ボタンを押します。これで、新しいオーディオクリップの録音開始同時に、オリジナルのクリップが再生されます。オリジナルクリップの長さ分、録音をしたらスペースキーまたはストップボタンを押して、演奏と録音を停止してください。
*この例に従って、トラックバウンスをする際、トラック2のモニター設定が「Auto」になっていますと、大きい音量で再生される可能性がございます。
リサンプリング
録音をして新たにサンプルを作成する手法として、マスタートラックの出力をリサンプルする方法があります。この方法では、リターントラックに挿入したエフェクトのサウンドも含めて取り込める利点があげられます。(前出のトラックバウンスによる手法ですと、オリジナルのオーディオクリップのトラックに挿入されたエフェクトの効果のみがオーディオ化されます。)次の図例では、トラック2でマスタートラックの出力音をモニターできるようにその入力を設定しています。

リサンプリングのためのルーティング設定例:トラック「2 Audio」の入力設定:Audio Fromの下のリストから「Resampling」選択して設定します。
ルーティングの設定が正しくできましたら、録音は先の方法と同じです。
ディスクに書き出す(レンダリングする)
最後に、ファイルメニューから「ディスクに書き出す」コマンドを使用する方法をご紹介します。これもまたマスター出力をレコーディングする機能です。この方法のメリットは、録音(書き出し)する小節の長さを数値で設定することができますので、手動でスタート/ストップの操作をする必要が無い点です。しかしながら、書き出し作業の終了後に、そのレンダリングされたファイルクリップは現在の開いているliveセットに自動で追加されませんので、ブラウザビューから手動でそのファイルをLiveセットの中にドラッグアンドドロップで追加する必要があります。

ディスク書き出しダイアログ:ここでは書き出すファイルの長さ、ファイルの種類、ビットレート、サンプルレートなどが設定できます。
ボーカル編集の結合
次にliveのオーディオ編集において有効なクリップの結合と分割コマンドを使用した編集をご紹介します。この2つの編集機能はアレンジャービュー上のクリップのみに有効ですが、これらを活用することで、より自由で想い通りの編集が可能になります。ここでは、アカペラのトラックを使用した例をとりあげます。例えば、次の図例のように「Busta
Rhymes」と名前の付いたクリップには攻撃的な言語が含まれています。そこでこの長いクリップの中で不適切な表現の部分を分割して、リバース(逆再生)をかけます。この編集によって、過激な表現をぼやかした雰囲気のトラックを演出できます。

分割コマンドによって選択範囲を分割した例:このコマンドによって、1つのクリップが選択範囲とその前後の3つのクリップに分割されます。
この編集を行うには、Busta Rhymesのクリップをアレンジャービューに移動します。図の中で、編集が必要な部分を選択して、編集メニューかた「分割」コマンドを選択(もしくはキーボードショートカット;Windows=Ctrl
+ E、Mac OS=Command + E)してクリップを分割します。これでクリップは図例のように3つに分割されました。
次に2番目のクリップにリバース処理をします。しかしこの状態ですぐにリバースを実行することはおすすめしません。なぜならば、現状ではこのクリップは長いオーディオファイルの中で、ある一部分だけを選択して使用しているからです。従って、ここでリバースボタンをクリックして実行してしまうと、長いオーディオファイル全体をリバース処理するため、プロセスに多少時間がかかってしまうからです。また、長いファイルをリバース処理するとその分ディスク容量を圧迫しますので、ここではリバース処理をする前に選択部分だけを1つの(短い)オーディオファイルに書き出してからリバース処理をすることにしましょう。
参考:Liveのリバース処理の原理
Liveでのリバース機能は現在参照しているクリップのソースファイルを逆から読み出すのではなく、リバースバージョンのオーディオファイルを作成して、ノーマルバージョンと置き換えます。従って、これを最初に実行した場合、ソースファイルの長さと比例して多少の処理時間を要します。また、一度リバース処理を実行してしまえば、次回からはリバースボタンをクリックするごとにノーマルとリバースバージョンのファイルを順番に置き換える処理だけで済みますので、瞬時にクリップはリバースされます。
現在の選択範囲を新しいオーディオファイルとして書き出すには、今までご紹介してきました方法でも可能ですが、多少手間です。(Live4ではルーティング設定をするためにセッションビューに一度切り替えなければなりません。また、アレンジメント編集において、その選択範囲が常に小節:拍:音符単位であるとは限らないからです。)そこで、アレンジャービュー上での編集においてもっと簡単にこれを行える方法をご紹介しましょう。書き出したいクリップを選択して、編集メニューから「クリップ結合」コマンドを選択(キーボードショートカット:Windows=Ctrl
+ J、MacOS=Command + J)を実行します。これで現在選択されているクリップがオーディオファイルとして書き出されます。
参考:Liveのクリップ結合の原理
クリップ結合機能はアレンジャービュー上で、現在選択されている時間範囲内の同一トラック上のクリップをまとめて1つのオーディオファイルとして書き出して、この範囲内の(複数の)クリップを1つの新しいクリップに置き換える機能です。この際、選択されているクリップの設定はクリップビューの「Sample」セクションの設定(トランスポーズ、ワープマーカー、クリップボリュームなど)は反映されて、書き出されます。それ以外の設定(例えば、エフェクトのクリップエンヴェロープなど)は反映されませんのでご注意ください。また、複数のトラックのクリップが選択されている場合には、トラックの数だけ、オーディオファイルが書き出されます。この編集を実行する際には再生を停止する必要がございます。
クリップ結合を実行すると、アレンジャービューに配置された元々のクリップは取り除かれ、新しく作成したクリップに置き換わります。(もちろん、取り除かれたクリップのソースファイルはハードディスク上から削除されることはありません。)
結合コマンドは1つのトラック中にあるクリップの数、およびそのソースとなるサンプルファイルの数に関係なく実行することができます。しかし、今回ご紹介したように1つのクリップだけを上書きする際にも使用することができます。これによって、先程分割した2番目のアカペラクリップを選択し、実行すれば、見た目には変わりありませんが、同じ長さのクリップが新たに作成されたことになります。このときハードディスクには、元々のアカペラのオリジナルファイル(長いファイル)の他に、新たにアカペラファイル(短いファイル)が作成されます。(これはこのクリップのクリップビューを見ればソースファイルの長さが変化していることが確認できます。)ここ結合によって、新しく作成したファイルをリバースすれば、簡単にリバースしたい波形部分だけを編集することができることになります。

クリップをリバース処理した例:結合コマンドを使用しても、使用しなくてもアレンジャービュー上での見た目は変わりありませんが、ソースファイが長い場合、結合コマンドを活用した方がハードディスクの容量の有効活用、コンピュータへの負荷、その後の編集(特にワープマーカー編集)などにおいてその恩恵が得られるでしょう。
この要領で、必要回数分だけ編集作業を行っていくと、次の図のようになります。

細かい編集を施した例:もし、このクリップ内に同じフレーズで同じ編集を行いたい箇所が存在するならば、その部分を以前に編集したクリップをコピー&ペーストで置き換えるのも、有効な編集方法です。
この図例の中には約40の異なる編集を施したクリップが存在します。編集を完成したら、ここで再びクリップを結合しましょう。このトラックの長さを選択して、クリップ結合コマンド実行すれば、次の図例のように、編集したクリップが再び、元の1つの長いクリップになります。新しいクリップを書き出したらクリップ名をオリジナルのクリップと区別するために「Clean」とつけることにしましょう。(クリップ名の変更はクリップをダブルクリックしてクリップビューを表示し、画面の左下で変更できます。)これできれいに編集したアカペラのクリップを使用することができます。また、この編集をした後でも元々のオリジナルファイルは、上書きされずにハードディスク内に残っていますので、必要に応じて再び使うことができますし、編集に恐れることもないでしょう!
細かい編集を施したクリップを結合して、再び結合した例(名称変更前)
CPU負荷の軽減
新たなオーディオファイルを書き出すことはCPU負荷の抑制に効果的です。例えば、トラック中にヴァーチャルインストゥルメント(プラグインのソフトシンセ)や負荷の高いエフェクトを多く使用している場合、コンピュータにより多くのCPU負荷がかかる(高い処理能力を必要とする)ケースに遭遇するでしょう。特に複雑な演算処理によって、サウンドを生成するプラグインを使用の場合は、オーディオファイルの再生よりもより多くの負荷がかかりますので、これをレンダリングしてオーディオファイル化することをお勧めします。これによってCPUの負荷から開放され、より多くのトラックの作成や演奏が可能になるでしょう。次に、オーディオファイル化の方法をご紹介します。

CPUロードメータで、live再生時の負荷を確認できます。
オーディオファイル化の手順は、最初にご紹介しました方法(トラックバウンス)と同じ要領で行えます。まずオーディオトラックを作成(キーボードショートカット;Windows=Ctrl
+ T、MacOS=Command + T)し、その入力先をヴァーチャルインストゥルメントが挿入されているMIDIトラックに指定します。インストゥルメントのパートを新しいオーディオクリップとしてレコーディングしたら、そのインストゥルメントのMIDIトラックを削除します。

負荷の高いヴァーチャルインストゥルメントをオーディオ化して削除した例:インストゥルメントトラックを再編集する必要がある場合はまず、トラックごと削除せずにオーディオ化したインストゥルメントやエフェクトをオフにしてみましょう。それでも改善されない場合は、プラグインをトラックビューのチェーンから削除しましょう。
この方法はまた、2以上のインストゥルメントを使用して1つのパートを構築しようとするときに大変役立ちます。次の図例では、2つの異なるインストゥルメントを使用してドラムパートを構築しています。ここではトラック「3
MIDI」でWaldorf Attackを使用してキックとハイハットを、トラック「4 MIDI」ではNI Battery2がスネアとシンバルを担当しています。更に2つのオーディオトラックの合計4つのトラックで1つのドラムパートを構成しています。これら全てを先にご紹介しました「リサンプリング」の要領で1つのオーディオトラックにまとめてみましょう。そうすれば4つのトラックでドラムパートを演奏するより低いCPU負荷で演奏が可能になるでしょう。この際、キックやハイハットなど個別にミュートしながらドラムパターンを複数回オーディオファイル化することで、演奏やその後の曲の組み立てのアレンジが広がり、更なる自由度が加わるでしょう。

4つのトラック(1 Audio/4 MIDI)を1つのトラック(6 Audio)にオーディオとしてリサンプリングした例:Masterトラックから聞こえている通りにオーディオが録音されます。この際、鳴らす必要の無いトラックはミュートしておきましょう。
リサンプリングは、増大したヴァーチャルインストゥルメンツに大変有効です。また、オーディオファイル化によって、オーディオ処理でしか得られない表現も存在します。例えば、MIDIシーケンスでのトランスポーズの上下と、オーディオファイルでのトランスポーズの上下では、違ったサウンド効果が得られます。MIDIの場合では発音するノートを変化させるのに対して、オーディオの場合はシンセシス(合成方式)によって音程を変化させるため、独特のサウンドキャラクターが演出できる場合がございます。MIDIのパートを作成したら、先述の例のようにリサンプリング、そしてオーディオクリップの編集をしてみましょう。これにより、MIDIでの編集とは違ったファットで複雑なサウンドをクリエイトすることができるはずです。

オーディオ化したファイルにトランスポーズのクリップエンヴェロープを設定した例:特に画面右側のようにピッチベンドした効果を施した際、MIDIでのピッチベンド情報とは異なった、独特の効果が得られるでしょう。
これまで見てきましたように、Liveのオーディオ編集には無限の可能性が秘めています。恐れずにどんどんオーディオ編集して、ファイルにレンダリングしてみてください。Liveではオリジナルファイルに変更を加えることはありませんし、想像していなかった面白いサウンドを途中で発見するかもしれません。更に、Liveはハードディスクを常にきれいに保ったままで、かなり効率的な作業を続けることができます。(現在作業中のLiveセットの編集中に作成されたオーディオファイルで)ハードディスクの中で使っていないデータがあるとき、それを保存するか消去するかを、Liveセットを閉じる際にLiveが必ずたずねてきます。とりわけ、今回ご紹介しました思クリップ結合やリサンプリング機能はCPUの負荷を軽減し、プロセッシングパワーをその分、その他のサウンドクリエイションに利用する際の助けとなるでしょう。
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